<あれ>は優しい嘘なんかじゃなかった。小説『いたいのいたいの、とんでゆけ』三秋縋 感想・評価

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‏こんにちは‼

なで肩落ちこぼれ大学生のAsh(アッシュ)@oborerublogです。

誰にでも先送りしたいことってありますよね。

僕は大学の課題をなんとしてでも先送りしたい(切実)

今回は、先送りにできる少女との復讐の物語。

多少のネタバレはご容赦ください。

『いたいのいたいの、とんでゆけ』とは?

男はある日女子高生を車ではねて還らぬ人にさせてしまう。しかし、『先送り』という少女の能力によってなかったことに。そして男は少女の復讐を手伝うことになるというストーリーです。

三秋縋さんの作風、あらすじはどの作品も基本的に同じです。

社会に溶け込むことができなかった自己肯定感の低い男女が不幸の中に幸せを見つける。

これが全ての作品に当てはまります。

たとえば、僕の大好きな「恋する寄生虫」もその1つです。

操られていて何が悪い「恋する寄生虫」三秋縋 感想
三秋縋さんの描くありえないけどリアルすぎる世界観にあなたも引き込まれることでしょう。「恋する寄生虫の」感想とその後の考察です。ネタバレを避けつつ紹介していきたいと思います。漫画化もされ、アニメ化と実写化が去るのも時間の問題かも?

ただ、この『いたいのいたいの、とんでゆけ』という作品は少し違う部分があるんです。

それは描写の残酷さ。

復讐というテーマが加わって、多少読み手を選ぶ作品となっています。

 

理不尽すぎる人生

先送りして出来事をなかったことにできる少女は恐ろしいという言葉では表すことのできない理不尽を繰り返し受けていました。

少女は何の悪いこともしていないというのに。

  • 親に顔が腫れ上がるほど殴られる
  • 煙草を肌に押し付けられる
  • 姉に酒を吐くまで飲ませれる
  • スタンガンを押し当てられる
  • 学校で汚水を飲まされる

こんな恐ろしいことは小説の中にしかないことを心の底から願っています。

なぜ、こんなことをしてしまうんでしょうね…

そうでもしないと自分が生きていることに自信が持てないのかな。暴力行為でしか自分の地位を守ることができない人間にはなりたくありません。

僕のいる環境はとても恵まれているんだなと改めて感じました。

いわゆるいじめというやつは残念ながらこの世からなかなか無くなってくれません。

この作品で少女はいじめの復讐として殺人という手段を取ります。

”いじめ=殺人”である、という解釈はそれほど間違ってないのかもしれない。

 

生きていく勇気がないだけ

自ら命を断とうと考えている人に対して「そう思うならさっさと——」などという不適切な発言をする人が稀にいます。舌でも噛んで少し静かにしていればいいのに。

これまで、僕はそれを不適切だと思う一方でどう反論していいかわかりませんでした。

ただ、この作品を読んでようやくその答えに辿り着けた気がします。

大体、人は死ぬ勇気があるから自殺するのではない。生きていく勇気がないから自殺するのだ。

『いたいのいたいの、とんでゆけ』 三秋縋

どうですか、この言葉。僕の心にはスッと入ってきました。

生きていく勇気で溢れる世の中になってほしい。

 

あの仮装は復讐した後かも

秋の大きなイベントの1つにハロウィンがありますよね。

引きこもりの僕には全くもって無縁なイベントですが、仮装をして街を歩いたりするそうですね。

血や傷がついているように見えるメイクや服装をして行列を作って歩く。

もし、瑞穂と霧子のように本物の血がついていて本物の傷がついている人が行列に混ざっているとしたら?

その人は復讐を終えて血まみれなはずなのに、フツーに街を、歩いている

いつもの街、いつもの道を血まみれで歩いたら明らかに目立つし、異常な光景です。

でも、ハロウィンというイベントの日。その日だけは異常も街に溶け込んでしまう。

そんなことを考えて歩くハロウィンは少し楽しそう。

 

用水路から見る満月

霧子が用水路に落とされ、見つけた瑞穂と一緒に過ごす場面。

私たちは並んで寝転び、どぶの中から満月を見上げる。

『いたいのいたいの、とんでゆけ』 三秋縋

用水路は暗くて泥やゴミで溢れ、いつも人が歩いている高さよりも下にある。まるで不幸な環境というものを具現化したようなものだ。

満月は一般的には美しいもの。しかし、用水路という環境から見える満月はその美しさを最大限に発揮される。

暗闇の中では僅かな光も輝いて見えるように。

三秋縋さんの物語を表すような情景描写だなぁと感じました。

 

結末

瑞穂は飲酒運転で事故を起こし、引いてしまった少女の復讐を手伝い、自分がもう生きていないはずの人間なんだと知る。

これだけ見るとひどすぎる人生です。何の救いもない完全なバッドエンド。

でも、そうじゃないのが三秋縋さんの描く物語なんですよね。

瑞穂と霧子は互いを理解し合い<あれ>は実在していて優しい嘘なんかじゃなかったということを知った。

それだけで二人は救われてハッピーエンドだと言えるんです。

 

元気の出る話

興味深かったのが”あとがき”です。

”落とし穴”について三秋縋さんの考えや描きたいものを綴っていました。

『いたいのいたいの、とんでゆけ』は、二度と抜け出せない穴に落ちた人の物語でした。しかし僕はそれを単に薄暗い話としてではなく、元気の出る話として書いたつもりでいます。とてもそうは見えないかもしれませんけれど、でも、そうなのです。

『いたいのいたいの、とんでゆけ』 あとがき 三秋縋

この作品を読んで元気出た~っていう人はなかなかの少数派だと思いますが、よく考えると一理あるかもしれません。

僕自身どんな時にこの方の作品を読むか思い返してみると、落ち込んでいた時だったり何かがうまくいっていない時に欲している気がします。

自分が置かれている環境でも幸せを感じられる瞬間があるのだと無意識に期待しているのかもしれませんね。

今回も素晴らしい作品でした。次回作にも期待が高まります。

 

まとめ

いたいのいたいの、とんでゆけ。

 

最後まで読んでくれてありがとね。Ash(アッシュ)@oborerublogでした。

 

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