こんにちは!
建築大学生ブロガー、あっしゅ@oborerublogです。
「わたし、気になります」
好奇心旺盛お嬢様に振り回される省エネ主義な高校生の物語。
米澤穂信さん描く、”古典部シリーズ”第一作『氷菓』を読んだので感想を書き殴ります。
- 穏やかな謎解き
- 芯を持った個性的なキャラクター
- 副題を考察するのも楽しい
- 非日常的な事件は発生しない
青春の爽やかさも苦さも同時に楽しめて、日常的ミステリーを味わうことができます。
あなたはどのキャラクターに近いですかね?
ネタバレあります。ご容赦ください。
小説『氷菓』とは?
ミステリーの王、米澤穂信さん描く青春とミステリーを合わせた一作。
それが『氷菓』です。
<古典部>シリーズと呼ばれ、現在6作品あります。
- 『氷菓』
- 『愚者のエンドロール』
- 『クドリャフカの順番』
- 『遠回りする雛』
- 『ふたりの距離の概算』
- 『いまさら翼といわれても』
シリーズを通して特徴的なのは大きな事件性がないこと。
誰かの命が危ぶまれたり、襲われたりすることは皆無。
一滴の血も流れません。
残虐的な描写があった『満願』とは大きく異なります。
謎解き自体の面白さよりも、それによって垣間見える人間性や心を機微を楽しむ作品かなという気がします。
穏やかな謎解きの感想
基本的に穏やかな謎解きだなぁ、と感じました。
そもそも事件を解決する!とかそういう話でもないので、真相が明らかになったからと言って生活が一変するわけではありません。
解決しなかったところで、学校生活に支障は全くない。
変化するのは心理的なものくらいです。
- 事件発生
- 謎解き
- 解決
こんな風に大半のミステリーは受動的推理になる。
一方で、<古典部>シリーズは総じて積極的推理。
気になるからこそ、思考する。
どっちかっていうと嗜好かな。
結末はなんとも言えない苦みのあるものでしたね。
自分は叫びをあげることができるか?それほど強い自分を持ち合わせているか?
大衆は英雄という名の犠牲を差し出して、安寧を手に入れました。
人というものの黒い部分が表れたような真相でしたね。
”犠牲”を”いけにえ”と読むことを恥ずかしながら初めて知ったことは内緒。
知ってました?常識なのかな。
折木奉太郎の省エネルギー
里志に灰色と言われる奉太郎の生き方。
やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に
モットーを心に掲げて生活をしている高校生が果たして、どのくらいいるのだろう?
何も考えず時を浪費している人に溢れた世の中で素晴らしい心構えです。
でも千反田えるに出会ってからというもの、奉太郎は全く灰色とは真逆の高校生活を送っている気がしてなりません。
- 鍵のかかった教室
- 愛なき愛読書
- 薬品金庫の在り処
- 『氷菓』に込めた伯父の想い
作中だけでも4つも解決に導いてしまっているのです。
薔薇色とは言わないまでも、かなり明るい色に染まってない?
才を持つものは必然的に人生に物語性を生み出してしまうのか。
里志も貶めるときは無色と言うって発言したのが的を得ているのかもしれない。
未だ染まらず。
これから色づく余地が残っている、というだけな気がします。
物語を操る姉
国際郵便で奉太郎のもとに手紙を送り、物語へ導く存在。
節目ごとで多すぎず少なすぎない、適切な情報提供をしています。
加えてアニメでは顔すら明かされない。
まるで、世界が俯瞰的に認識できる全知全能な神。
反則的です。
どこか既視感を感じると思って考えてみたら、『化物語』から始まる<物語シリーズ>に登場する臥煙伊豆湖にそっくり。
「わたしは何でも知っている」と自信たっぷりに豪語するお姉さんと重なりました。
声優さんも同じだったので、既視感を感じたのも頷けます。
惹かれたのはその思考。
きっと十年後この毎日のことを惜しまない。
イスタンブールからの手紙に綴られていたもの。
こんな言葉が出てくることに憧れる一方、今の自分を考えるとなんとも憂鬱にさせてくれる。
こんな風に人生を送ってみたいものです。
副題『The niece of time』
読み終わっても一つ謎に残ることが。
サブタイトルとして『The niece of time』という表記がされています。
直訳すると『時の姪』?
内容から考えても、姪というのが誰を指すのかは明らかですが、いまいちピンときません。
そこで調べたところ、イギリスの推理小説『The Daughter of Time(時の娘)』が由来であるという結論に辿り着きました。
タイトルの『時の娘』(The Daughter of Time )とは、「真実は時の娘」(英語:Truth is the daughter of time.あるいはTruth, the daughter of Time. ラテン語:VERITAS TEMPORIS FILIAあるいは、VERITAS FILIA TEMPORIS)というフレーズの一部であり、「時の娘」とは「真実」「真理」(Truth)を意味する。「真実は、今日は隠されているかもしれないが、時間の経過によって明らかにされる(明らかになる)」という意味だとされている。
えるの伯父、関谷純が残した『氷菓』に込められた想い。
強くいられなければ、叫ぶこともできない。
当時は届かなくても、時をかけて折木奉太郎によって明らかにされました。
さながらタイムカプセルのようですね。
こうやってサブタイを勝手に考察して、物語を自分の中で深めていくの楽しい。
小説の醍醐味でもある気がする。
あとがきの謎解き
僕はあとがきを残してくれる作家さんが好き。
価値観や遊び心を見せてくれたりするので、勝手に得した気分になります。
ところで先日、友人と寿司を食べに出ました。値段相応の味を堪能して、さて帰ろうか車に乗り込んだまではよかったのですが、どうしたものか運転手を務める友人が一向に車を出そうとしないのです。
時刻は食事時ですから、駐車場には次々と車が入ってきます。私たちははっきり言って迷惑になっています。ですが、早くしろと私がいくら促しても、友人は黙って曖昧な笑みを浮かべたまま車を動かそうとしません。
友人は決して悪戯好きではなく、むしろ真面目で慎重な性格なのですが、今日に限ってどうしたというのでしょうか。
事の真相は、また後日。どうか後日がありますように。
それでは、今後ともよろしくお願いします。
『氷菓』あとがき
あとがきにまで謎を散らしておくなんて、何とも粋な方です。
その遊び心に惚れ惚れします。
読者はもちろん熟考して、悩みながら答えを求めるはず。
答え合わせはどこでできるかというと、<古典部>シリーズ第三作目『クドリャフカの順番』の一節で明かされます。
気になった方は読み進めるしかありません。
ちなみに僕は全く分かりませんでした。
アニメ化も
アニメも全話視聴しました。
- 物語の順序の違い
- 結末の違う話
- 視覚的世界観の没入
小説では感じることのできない面白さがアニメには転がっています。
好きなアニメランキングベスト5に入るくらい好きだと断言できるくらい。
「わたし、気になります」の圧力を視覚的に感じれます。
視聴するのであれば、『dアニメストア』一択です。
月額400円でアニメ見放題。
他のサイトと比べるまでもありません。
まとめ
小説と言っても、読みやすく重すぎる話でも無いので気楽に読めます。
- 穏やかな謎解き
- 青春の苦み
- 個性的なキャラ
<古典部>シリーズの魅力はこういうところにあるのかなぁ、と思ったりします。
ワクワク・ドキドキとかの青春ではないけれど、こんな平和的な謎解きができる高校生活は最高だろうな。
最後に
「わたし、気になります」って頼られたいけど、それに伴う能力がありません。
読んでくれてありがとね。
あっしゅ@oborerublogでした。
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