こんにちは!
建築大学生ブロガー、あっしゅ@oborerublogです。
人間の闇を覗いてみたくないですか?
ミステリーの王、米澤穂信さん描く『満願』を読んだので書き殴ります。
- 人間の根底に潜む闇が垣間見える
- 読み終わった後の凄み・余韻が格別
- 短編集だから読書苦手でも読み切れる
- 憂鬱な時に読んだら、より深く沈んで帰ってこれないかも
一冊にこんなにも詰め込めるのか!というくらい様々な感情を味わえます。
それも特にネガティブな方の。
ネタバレあります。ご容赦ください。
小説『満願』とは?
僕がオススメのミステリー作家を聞かれたら、まず最初に名前を挙げます。
『氷菓』から始まる”古典部シリーズ”や『王とサーカス』など、名のあるミステリー作品を数多く世に届ける米澤穂信さん。
今回紹介する『満願』はその中でも後味の悪さが格別です。
様々な部門にその魅力は認められ、以下の部門すべてで一位を獲得し三冠を達成しています。
- ミステリが読みたい!(早川書房)
- 週刊ミステリーベスト10(文藝春秋)
- このミステリーがすごい!(宝島社)
ミステリーをあまり読んでいない方でも『満願』は非常にオススメできる一冊。
6つの短編集で構成されていて、読書を日常的にしていない人でも読みやすいです。
- 夜警
- 死人宿
- 柘榴
- 万灯
- 関守
- 満願
驚くべきは短編集とは思えない圧倒的な物語の密度。
一つ読むだけでも満足度がビックリするくらい大きく、引きずり込まれるように没入していきます。
底の見えない暗闇に溺れていく感覚が堪りません。
印象に残った物語
『満願』は6つの物語で構成されていますが、今回はその中でも僕の心を掴んで離さなかった”夜警”と”柘榴”についての感想を綴っていきます。
正直、この二作品を読むためだけに『満願』を購入してもお釣りがくるんじゃないか?と思うほどもの満足感です。
小心者の最期、夜警
『満願』の第一作目を飾る”夜警”。
ざっくりあらすじ。
- 事件は解決したものの部下は落命してしまう
- 部下の言動に腑に落ちない点が出てくる
- 悲劇的の裏に隠れる真相が明るみに
犯人に対して臆することなく対峙し、事件を解決に導くも落命した警官。
これだけ聞くと、果敢な警官の最期を描いた物語のようにも感じます。
『人の一生は最期の瞬間に決まる』
なんて言葉がありますが、この物語においては微塵も当てはまりません。
小心者が小心者でしかいられなかった末路。
これくらいが適切な表現な気がします。
ミスをしたときにミスをしたと認めることは当たり前で、隠蔽する人間を容認する余地はどこにもありません。
では、それが人生を動かしてしまうようなミスだったときは?
- 現在の職が失われる
- 大切な人が離れていく
あなたは些細なミスをしたとき同様に過ちを認めることができるでしょうか。
落命した警官はそれができませんでした。
過ちを過ちにすることを恐れ、事件という大きなモノで包み隠そうという発想に至ったんです。
悲劇的な事件だったのに、その真相はあまりにも情けない。
隠蔽の代償が落命。
誰が見ても釣り合ってない等価交換の物語でした。
美しさの暴力、柘榴
いい意味で最高に気持ち悪い作品です。
短編でこんな恐ろしい余韻を味わったのは初めてかもしれない。
ざっくりあらすじ。
- 二人の娘を持つさおりは離婚を決意
- 親権をめぐり裁判になる
- 娘たちの本懐は意外なところにあった
物語は単純で離婚の親権をめぐり、夫婦間で裁判を行うだけ。
しかし、それはあくまで表面的に見た時の話。
結果的には二人の娘が希望した方に親権は動き裁判は収束します。
恐ろしいのは姉・夕子の思考。
およそ中学生の及ぶ結論とは思えません。
さおりの考える理由とは全く別のところに夕子の本懐はあり、同じ裁判の中にいても見ている景色はまるで違いました。
真の目的は一つ、『美しくなる前に傷を』。
- 姉妹の選択
- 裁判での証言
- 証拠づくり
- 裁判そのもの
最初から最後まで夕子にとっては手段でしかありません。
さおりを解放へ向かう物語と思いきや、夕子の本懐を叶える物語だったことに気づく瞬間はまさに鳥肌モノ。
特に人間の悪性を詰め込んだ最後の一文は、誰もがドロドロとした余韻に溺れることでしょう。
まとめ
この方の描く作品はなんとも言い難い『苦さ』を味わわせてくれる気がします。
本当に堪りません。
- 夜警
- 柘榴
この二つの感想を綴らせていただきました。
ですが、他の物語が面白みに欠けるとは微塵も思いません。
他の4作も勝るとも劣らない、人間の底に導いてくれる物語です。
また人に紹介したい小説が増えてしまいました。
嬉しい悩みです。
最後に
こんなにも苦さを感じる物語はない。
最後まで読んでくれてありがとね。
あっしゅ@oborerublogでした。
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